銀塩プリントワークショップ(銀塩ネガフィルム方式)に行ってきた
恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館は写真に関する「ワークショップ」を定期的に開催しています。
3月15日(土)に、前から行きたかった「モノクロ銀塩プリントワークショップ(銀塩ネガフィルム方式)」に参加しました(リンク先はそのうち消えるかもしれません)。
35mmネガフィルムを持参して、焼き付けと現像を行ないます。私の近くに座った方は6×6判のネガを持参されていました。私はモノクロのネガを持参です。
35mmフィルムは、フィルムの幅が35mmで1コマの大きさが24mm×36mm、6×6判は1コマあたりの領域が60mm×60mmで、1コマの大きさが56mm×56mmと、かなり大きくなります。
フィルムに撮影した画像は、それ以上感光しないように、現像過程を経てネガまたはポジに定着されます(フィルム現像)。
今回、この作業はありません。そもそもフィルム現像はあんまり面白くありません。
現像済みフィルムに撮影した画像は、以下の手順でプリントされます。
- 露光…フィルムに撮影した画像を印画紙に投影して感光(後述)
- 現像…感光した印画紙を見に見える映像に変換(90秒)
- 停止…それ以上変換が進まないように停止(15秒)
- 定着…画像にならなかったもの取り除く(60秒)
- 水洗…薬品を取り除くために洗い流す(適当)
- 乾燥…乾かす(今回は専用の乾燥機を使用)
現像、停止、定着はそれぞれ専用の薬品があります。ちなみに、現像済みの廃液には銀化合物が含まれるため、特別な処理が必要なはずです。
最後の2つの過程は、予備水洗のみ自分でやって、本水洗と乾燥はスタッフの方にやってもらいました。
●露光
米国ベセラー社の引き伸ばし機を使いました。
引き伸ばし機の原理は写真撮影と全く同じで、フィルムの代わりに印画紙に像を作ります。
今回は50mm F2.8のレンズを使いました。ピントを合わせるときはF2.8開放で、実際に露光するときはF8まで絞るように指導されました(カラーネガの場合はF5.6)。
絞った方が(F値を大きくした方が)ピントの合う範囲が大きいのと、たいていのレンズがF8くらいで最高の性能を発揮するためだと思いますが、カラーネガの方が絞りを開く理由は聞きそびれました。おそらく、カラーネガはオレンジベースで、全体に暗くなっているので、同じ時間で露光するにはより多くの光が必要だからだと思います(露光時間はモノクロもカラーも同じ時間が指定されていました)。
引き伸ばし機には、画像確認用の連続点灯ボタンと、露光用のタイマー付きボタンが付いています。
最初は以下のようにして「段階露光」を行いました。
- 画面の1/4を残して印画紙を遮光紙で覆う
- 4秒間露光
- 画面の1/2まで遮光紙をずらして露光
- 4秒間露光
- 画面の3/4まで遮光紙をずらして露光
- 4秒間露光
- 遮光紙を取り除いて露光
- 4秒間露光
これで、1枚の印画紙に4段階の露出ができます。
▲上から下に1/4ずつずらしながら4秒ずつ露光
各4秒なので、一番上は16秒、一番下は4秒の露光になる
▲まず16秒全体を露光
次に1/4ずつずらしながら2秒ずつ追加露光
最後の1/4は何もしないので、22、20、18、16秒の露光になる。
●現像、停止、定着、予備水洗
露光が終わった印画紙は、暗室内の作業場に持っていって処理をします。
最初に現像液につけて十数秒経つと画像が浮き出てきます。もちろん知識としては知っていますが、なかなか楽しい瞬間です。
一度、コントラストを決めるフィルター(後述)を付け忘れたら、画像が出てきた直後にどんどん黒くなっていって消滅するという感覚も味わいました。切ないものです。
暗室内は「セーフティーライト」と呼ばれる灯りが付いていました。セーフティーライトといえば赤という印象ですが、今回点灯していたのはアンバーイエローでした。
フィルム現像には完全な暗室(トータルダークネス)が必要なんですが、印画紙の場合は一定の波長以下であれば少し明るくても大丈夫です。
ただ、現像が始まったらテンポ良く次のプロセスに進まないと、化学変化が進行してしまいます。
作業所に置かれた1分計を見ながら次々と作業します(サウナにあるような感じのタイマーです)。この時計、なぜか逆回転でした。「あと何秒」が分かりやすいようにということです。
●本水洗、乾燥
予備水洗が終わったら、二重カーテンの暗室を出て、本水洗をお願いします。
この時、スタッフの方とプリントについてのアドバイスがもらえます。
できた写真は、成功でも失敗でも水洗後、乾燥機にかけられました。
写真の乾燥というと、木製の洗濯ばさみでつるすイメージですが、時間がかかるからでしょう、今回は乾燥機を使用しています。ベルトコンベアーに乗って、プリントが乾燥されていました。
●覆い焼き
最初の写真は、露出レベルが良かったので、特別な操作はしませんでした。
2つめの写真は、少し暗いところがあったので、覆い焼きに挑戦しました。
▲20秒の露光+4秒間だけ右側を動かしながら覆う
しっぽがきちんと表示されるのが分かる
●コントラスト調整
今回使った印画紙は、イルフォード社の「マルチグレード・ペーパー」で、感光色(周波数)によってコントラストが変わるものです。
本来は印画紙ごとにコントラストや階調性が決まるのですが、マルチグレード・ペーパーはフィルターを変えるだけで調子を変えることができます。
せっかくなので、チャレンジしてみました。
▲20秒の露光(フィルター3)
コントラストを上げたら、黒い部分がつぶれてしまった
モノクロ写真は、コントラストが少し強い方が見栄えがするように思います。
●終わりに
昔からやってみたかったモノクロ現像がやっと体験できました。多くの人が言うように、現像液から映像が浮き出る瞬間は面白いものですし、失敗したときに、一瞬浮き出てどんどん黒くなっていく切なさも楽しめました(ネガさえあればプリントはもう一度できます)。
ただ、今回、これだけの作業をするのに2時間以上かかっています。慣れたらもう少し早くできるでしょうが、それでも相当な時間がかかりますし、人手による作業はミスもあります。
趣味ならともかく、仕事でやるのはちょっときついなあ、というのが率直な印象です。
そういえば、ノルマンディ上陸作戦でキャパが撮った写真は、フィルム現像過程のミスで大半のカットが失われたしまったそうです。
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