写真講座(第2回)~縦横の表現~
縦横奥行きに時間を加えた現実世界を平面的に切り取る行為を「構図」と呼ぶ。
構図についての参考書は山ほどあるので、ここで書く必要もないだろう。
基本原則は以下の通り。
- 視線方向、動く方向に空間を空ける
- 広がりを持たせたければ途中で切る
- まとまりを見せたければ全体を入れる
- 主題がど真ん中だと、安っぽくなりやすい
(決して駄目というわけではない)
さらに、対角線構図だとか、三分割法だとか、いろんな技法が山ほどあるので、そこは適当に調べてみて欲しい。
カメラの持ちやすさの問題から、横位置で撮る人が多いが、縦横両方で撮ってみるのも面白い。
ちなみに、英語で縦位置は「Portrait(ポートレート)」、横位置は「Landscape(風景)」という。
確かにポートレートは縦位置が多いし、風景は横が多い。しかし、両手を広げたポーズなど、横位置のポートレートもあるし、滝の写真などは縦位置の方が一般的である。ちょっと変な使い方だが。英語にはこういう妙な言葉がちょくちょくある。
下の写真は、全く同じものをトリミングしてみた。周囲が少し欠けるくらいの方が迫力が出るが、全体が分からなくなる。
▲全く同じ写真で、周囲を切り取ってみた
モデル: MOBACO.
もっとも、舞台の様子を見せたければ、もっと広い範囲を撮るべきで、左の写真は中途半端な構図になってしまっている。
ちなみに、トリミング(trimming)は英語のようだが、写真用語としては和製英語のようだ。写真用語としてのトリミングは、英語ではクロッピング(cropping)と呼ぶらしい。
ところで、トリミングを嫌うアマチュア写真家は多い。どうやら、土門拳が主張した「絶対非演出の絶対スナップ」を拡大解釈しているらしい。
商業写真では、判型の問題からトリミングはふつうに行われているし、土門拳だって子供の写真を撮るときにはお願い(つまり演出)をしていたらしい。
フランスの有名な写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンもトリミングをしないことで有名だったが、最も有名な作品「サン=ラザール駅裏、パリ」はトリミングされたものらしい。
▲「サン=ラザール駅裏、パリ」
(アンリ・カルティエ=ブレッソン)
この写真集に米国の出版社が付けたタイトルが「決定的瞬間」である。
ちなみに、セオリーに従えば進行方向に空間を空けるべきだが、本作品はぎりぎりに詰まっており、ちょっと不安定な印象を受ける。次の瞬間、水たまりに着地(着水?)する惨劇を思わせる演出なのだろう。
撮影時に集中せず、「あとでトリミングすればいいや」と適当に撮ることは良くない。それは被写体を真剣に見ていないことを意味するからだ。
構図がいい加減な人は、きっと光も見ていないし、被写体の動きも見ていない。
しかし、撮影時にどのようにトリミングするかを考えることは全く問題ないし、撮影後に発見した新しい視点を生かすために構図を変えることもあるだろう。
トリミングをしながら、構図の勉強をすることもある。
「安易なトリミング」は避けるべきだが、別に禁断の技法ということはない。
【今回の余談】
コンパクトカメラの縦横比は3対4、一眼レフは3対2である。
広く使われてきた写真フィルムは、コダックが映画用に作った規格で、35mm幅のフィルムに24mm×18mmの映像を記録した。4対3の比率である。
ライカは、このフィルムを写真用に流用したが、画質を上げるため2コマ分を使うことにした。24mmの幅はそのままに、18mmを2コマ分、つまり36mm使った結果、36mm×24mmで3対2の比率になった。
テレビ画面は当時の映画を考慮して4対3の画面比率になった。また、PCの画面はテレビを考慮して同じく4対3になり、カシオのデジカメはPCとの連携を考えて4対3になった。コンパクトデジカメはこの流れをくむため4対3の画面比率である。
一方、一眼レフはライカ版の流れをくむため3対2の画面比率になっている。
現在は、ライカ版を「フルサイズ」と呼ぶが、35mmフィルムを写真に流用した当時は極小フォーマットであり、高画質写真は無理と言われたそうだ。
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