写真講座(第4回)~写真の明るさ~
写真は、光量によって変化する物理現象や化学現象を利用している。デジカメの場合は物理現象、フィルムカメラは化学反応を利用する。
●露出
光が多く当たると明るく、少なく当たると暗くなる。この時、明るくなりすぎたり、暗くなりすぎたりしないように光量をコントロールする必要がある。これが「露出(Exposure)」である。
光量を水量に置き換えて考えてみよう。
水道からバケツ1杯の水を入れる。蛇口を大きく開けば短時間で一杯になるし、どんなに少量の水流でも時間をかければ一杯になる。
バケツ一杯の水が、必要な光量で「適正露出」と呼ぶ。光が多すぎると明るくなりすぎ、少なすぎると暗くなりすぎる。
同じ量の水を得るための公式は以下の通りである。
総水量 = 蛇口の太さ × 時間
総水量を光量とすると、蛇口の太さに相当するのが「絞り」、時間に相当するのが「シャッター速度」である。
●明るさの絶対値(EV値)と露出補正
シャッター速度が半分になると光量も半分になり、シャッター速度が倍になると光量も倍になる。光量が倍変わることを「1段」と呼ぶので、シャッター速度が倍または半分になると光量が1段変わる。
絞りの単位は光量ではなく長さの逆数なので、絞りの自乗の逆数に比例して光量が変わる。つまり光量を半分にするには、絞りをルート2倍すれば良い。つまり、絞りの場合はルート2倍が1段である。
1.0 | 1.4 | 2.0 | 2.8 | 4.0 | 5.6 | 8.0 | 11 | 16 | 22 | 32 | |
1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
1/2 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
1/4 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
1/8 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
1/15 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
1/30 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
1/60 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
1/125 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
1/250 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
1/500 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
1/1000 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
1/2000 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
シャッター速度を半分にして、絞りをルート2倍すれば、総光量は変わらない。これは写真の明るさを考える上で最も重要な法則である。
明るさの絶対値を「EV(Exposure Value)」と呼ぶ。EV値を意識することはほとんどない。私もどれくらいの明るさがいくつくらいのEV値か知らなかった。
さっき調べたら、絞り1でシャッター速度1秒が0EVなんだそうだ。
カメラが自動的に判定する明るさ(EV値)は、「全体として明るくもなく、暗くもない状況」に設定しようとする。
そのため、黒猫を撮影すると明るくなったり、真っ白な背景で撮影すると暗くなったりする。いずれもグレーに調整しようとするためだ。そこで登場するのが露出補正である。
カメラが判定した明るさよりも明るくしたい場合はプラス補正、暗くしたい場合はマイナス補正を行う。一般には明るいものを撮るときはプラス補正(明るすぎると勝手に暗くなるので、明るく戻す)、暗いものを撮るときはマイナス補正(暗すぎると無理に明るくするので、暗く戻す)である。
なお、最近のカメラは中心部と周辺部の明るさの差を自動的に調べて評価し、あまり不自然にならないようにしてくれる(評価測光)。また、特定のポイント(ふつうは真ん中)にピンポイントで露出を合わせる「スポット測光」や、何が写っていてもとにかく真ん中を重視して、周辺を参考にする「中央部重点測光」などを選べるカメラもある(一眼レフは必ず選べるが、入門機だと面倒な手順が必要な場合が多い)。
●自動露出
同じEV値を実現するための絞りとシャッター速度の組み合わせは無数にあるが、この組み合わせを変えることでさまざまな効果が得られる。そのため、多くのカメラで絞りとシャッター速度を自動的に設定してくれる(自動露出)が、設定基準が3種類ある。
- プログラム(P)モード…絞りとシャッター速度を自動的に決める。
- 絞り優先(A)モード…撮影者が決めた絞りに従って、カメラが自動的にシャッター速度を決める
- シャッター速度優先(S)モード…撮影者が決めたシャッター速度に従って、カメラが自動的に絞りを決める
絞り優先のAはAperture(絞り)の意味で、シャッター速度優先のSはSpeed(速度)の意味である。キヤノンはAモードのことを「Av」、Sモードのことを「Tv」と呼ぶ。これは「Aperture Value」と「Time Value」の略らしい。ちなみにソニーは、同じカメラでSとTv、AとAvが混在しており分かりにくい。
最近のPモードは、撮影状況を自動的に分析して、適切なシャッター速度と絞りを算出する。大変便利な機能だが、思った通りの値にならないことが多いので、上級者には人気がない。
なお、多くのカメラではPモードとは別にAUTO(オート)モードが用意されている。こちらはストロボ点灯の有無など、より多くの設定を自動化してくれる。
自動露出は便利だが、露出補正を組み合わせなければならない場合はかえって煩雑になる。絞りとシャッター速度をすべて自分で決めれば(マニュアル露出)、補正をしながら設定できるので、かえって素早く設定できる。カメラ上級者にマニュアル露出を愛用する人が多いのは、その方が早いからである。
シャッター速度と絞りは自由に組み合わせて使える。次回は、その理由を解説する。
【今回登場した用語】
- 露出(Exposure)…光の量
- EV値(Exposure Value)…明るさの絶対値
- Aモード(Aperture Mode)…絞り優先自動露出
- Sモード(Speed Mode)…シャッター速度優先自動露出
- PモードProgram Mode)…完全自動露出
- Av(Aperture Value)モード…絞り優先自動露出
- Tv(Time Value)モード…シャッター速度優先自動露出
- AUTOモード…高度な完全自動露出
- 評価測光...全体を見て適切な露出にする
- スポット測光…1点だけに合わせた露出にする
- 中央部重点測光…真ん中を優先した露出にする
- 露出補正…カメラが判定した明るさを変える機能。明るくしたいときはプラス、暗くしたいときはマイナス
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