映画『バービー』を見て来た
とんでもない良作でした。
冒頭は「2001年宇宙の旅」のパロディ(最近は、これが分からない人もいるようですが)。
少女は、赤ちゃん人形ではなく、成人女性の人形を得ることで、Powerを獲得した…と思ったら、実際にはそうではないという導入は秀逸なんですが、映画「2001年」を知らないとまったく意味不明で「人形を壊すなんて可哀想」という意見まで出ているそうです。
赤ちゃん人形しかなく、女の子は「将来の母親」としての役割しか与えられていなかったのが、バービー人形によって「成人女性への自己投影」ができるようになった、という話ですが、そのバービーは「白人で金髪の8頭身」ということで、別の抑圧を与えていることが示唆されます。
この辺がはっきり語られないのは、米国ではもはや常識となっている考え方なのでしょうか。それを受けて、制作元のマテル社は、黒人や職業を持ったバービーも発売しています。ですが、主力商品は「典型的な(typycal)バービー」で、映画では少女(中学生くらい?)に「フェミニズムを50年遅らせた」とまで言わせています。
メインストーリーは、バービーたち人形の住む「バービーランド」と、現実世界「リアルワールド」が交錯します。
バービーのボーイフレンドはケン、彼はバービーの添え物としての地位しかなく、永久に「カジュアルボーイフレンド(ステディではない恋人未満の状態)」でしかない。職業も持たない、単なる「イケメン」。
そのケンが、リアルワールドで男性優位社会を見てしまい、バービーランドで反乱を起こすのですが、これは現実の男女が逆転したものと似ています。ケンは、ルックスが良いだけで、何の仕事もせず、ただそこにいるだけ、というのはいわゆる「トロフィーワイフ」の男性版。それに不満を持ったケンが革命を起こすのも、70年代のウーマンリブ運動の再現のようです。
ちなみに、大統領や最高裁判事、宇宙飛行士のバービーもいるけど、typicalなやつは8頭身美人。(今は太ったバービーもいるそうですが)それに対して、ラスト近くで「ordinaryなバービーもお願い」というのも良かったですね。白人で金髪の8頭身ではない、ふつうのバービー。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画『バービー』を見て来た(2023.09.18)
- 推し活!展―エンパクコレクションからみる推し文化(2023.08.05)
- 『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』(2018.12.26)
- 短編映画「堕ちる」(2017.04.10)
- OVA「トップをねらえ」のツボ(2015.09.06)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント