カテゴリー「映画・テレビ」の12件の記事

2023年9月18日 (月)

映画『バービー』を見て来た

とんでもない良作でした。

冒頭は「2001年宇宙の旅」のパロディ(最近は、これが分からない人もいるようですが)。

少女は、赤ちゃん人形ではなく、成人女性の人形を得ることで、Powerを獲得した…と思ったら、実際にはそうではないという導入は秀逸なんですが、映画「2001年」を知らないとまったく意味不明で「人形を壊すなんて可哀想」という意見まで出ているそうです。

赤ちゃん人形しかなく、女の子は「将来の母親」としての役割しか与えられていなかったのが、バービー人形によって「成人女性への自己投影」ができるようになった、という話ですが、そのバービーは「白人で金髪の8頭身」ということで、別の抑圧を与えていることが示唆されます。

この辺がはっきり語られないのは、米国ではもはや常識となっている考え方なのでしょうか。それを受けて、制作元のマテル社は、黒人や職業を持ったバービーも発売しています。ですが、主力商品は「典型的な(typycal)バービー」で、映画では少女(中学生くらい?)に「フェミニズムを50年遅らせた」とまで言わせています。

メインストーリーは、バービーたち人形の住む「バービーランド」と、現実世界「リアルワールド」が交錯します。

バービーのボーイフレンドはケン、彼はバービーの添え物としての地位しかなく、永久に「カジュアルボーイフレンド(ステディではない恋人未満の状態)」でしかない。職業も持たない、単なる「イケメン」。

そのケンが、リアルワールドで男性優位社会を見てしまい、バービーランドで反乱を起こすのですが、これは現実の男女が逆転したものと似ています。ケンは、ルックスが良いだけで、何の仕事もせず、ただそこにいるだけ、というのはいわゆる「トロフィーワイフ」の男性版。それに不満を持ったケンが革命を起こすのも、70年代のウーマンリブ運動の再現のようです。

ちなみに、大統領や最高裁判事、宇宙飛行士のバービーもいるけど、typicalなやつは8頭身美人。(今は太ったバービーもいるそうですが)それに対して、ラスト近くで「ordinaryなバービーもお願い」というのも良かったですね。白人で金髪の8頭身ではない、ふつうのバービー。

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2023年8月 5日 (土)

推し活!展―エンパクコレクションからみる推し文化

早稲田大学校内に「早稲田大学演劇博物館」というのがあるそうです。そこの企画展「推し活!展―エンパクコレクションからみる推し文化」に行ってきました(2023年4月24日〜8月6日)。

そもそもこの博物館が、坪内逍遥による「シェイクスピア推し活」だったという解説には笑いました。

展示で目を引いたのは、江戸時代の歌舞伎関連。以前から思っていたのですが、大衆芸能である歌舞伎は、現在のアイドル活動に直結しています。

要所要所でかかる掛け声は、誰がやっても良いがタイミングや言葉に暗黙の了解あったり、中には掛け声を前提にした演目があったりするのは、現在のアイドルライブのコールと同じです。

浮世絵はブロマイドだし、芝居全体ではなく役者だけを見る人も多いというのも同じ。

違いは、歌舞伎の常連は料金の安い後方席(大向こう)に陣取るのに対して、アイドルライブでは最前列に陣取る人が多いことくらいでしょうか。料金は同じですしね。もっとも、最近は前列を割高な料金に設定するライブが増えてきたので、そのうち「大向こう」エリアが設定されるかもしれません。

戦後になると、ファンによる同人誌が増えてきます。商業誌と遜色ないレベルの作品があったりするのですが、肖像権が確立した現代では難しいかもしれません。また、オンライン活動が増えてきたので、後世に残らない物も増えています。

展示では、ファンの声を集めた寄せ書きや、来場者による寄せ書きなんかもありました。推しとして「新橋演舞場」や「国立劇場」なんかもあって、これがほんとの「箱推し」ですね。劇場のことを「箱」と言いますが、「箱推し」だとグループ内の個人ではなく全体を推すことになります。

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ついでに常設展も見て来たのですが、マリー・アントワネットになれる階段がありました。

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吹き出しが3点用意してあって、一緒に撮れます。

  • ようこそエンパクへ
  • さようなら、ベルサイユ、さようなら、パリ、さようなら、フランス!
  • マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから

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有名なセリフ「お菓子を食べれば」は後世のねつ造とされるせいか、ありませんでした。

 

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2018年12月26日 (水)

『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』

「プリキュア」シリーズは、TVを1回(1話)見ただけで、ほとんど何も知らないのですが、映画の評判がいいので見て来ました。

急に思い立って行ったんですが、TOEIとTOHOを間違えて映画館の前で気付きました。数分の距離でよかった。

最終回のせいなのか、もう上映期間終盤だったせいなのか、そこまで子どもは多くない感じ。そもそも場内はすいています。

そして、母娘より父娘が多いのは意外でした(いや、むしろ当然か?)。男の子はいませんね。

成人男女カップルもちらほら。もちろん、私同様おじさんお一人様も。公開後しばらくはレイトショーやってたくらいなので、大人のファンも多いのでしょう。

感想です。

変身のあとの決めポーズ、ふつうならここで字幕が入るのに、何もなし。結局名前がよく分からないまま終わってしまいました。映画にくるくらいだから、それくらいは常識。邪魔なテロップは入れないってことなのでしょうか。テロップ、かっこいいと思うんですが。

かろうじて、主役のエールと、ブラックとホワイトは分かりました。ブラックとホワイトが初代プリキュアらしい。

敵キャラは、まどか☆マギカの魔女みたいな絵面で、やっぱり闇を抱えてました。もうちょっと掘り下げることもできたんじゃないかと思います。

映画では、記憶を奪われること、奪われた記憶は、同じ記憶を共有している仲間の思いが強ければ取り返せること、このあたりが印象的でした。逆に、誰か1人の記憶を奪って自分のものにしたとしても、それは一方的な思いでしかなく、本当の意味での体験にはならないのでしょう。

自分が持つ誰かとの思い出は、相手にとっても大事な思い出になっていればいいな、と思いました。
さすがに話は単純化されてましたが、いい映画でした。

しかし、設定などは最後まで分かりませんでした。「そういうのはテレビで見てこい」ってことでしょうか。「子供にせがまれて、テレビシリーズ見てないけど、仕方なく見に行った親」でも楽しめたということです。子供映画としては理想的ですね。

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2017年4月10日 (月)

短編映画「堕ちる」

短編映画「堕ちる」を見て来ました。上映後、監督とライムスター宇多丸さんのトークイベント付き。

村山和也監督(左)と宇多丸さん(右)
▲村山和也監督(左)と宇多丸さん(右)

30分の短編なので、それほど多くの内容は盛り込まれてませんが、面白い作品でした。

特に、アイドルファンの扱いが、年齢や容姿も含めてとてもリアル(ちなみに、一般に思われているよりは年齢層は高いです)。特典会(握手会)で話しかけてくる常連さんとか、推しアイドルを売るにはどういう戦略が必要かと、勝手に戦略を立てるシーンとか、あるある話が満載でした。

ふとした拍子に、地下アイドル「めめたん」にはまってしまった、生真面目な織物職人の耕平さん、ファンと会話から思いついたのでしょう、めめたんの衣装を作ることにします。

NC工作機みたいな織物機に柄をプログラムして生地を織っていきます。会社の機械をこんなことに使っていいのか疑問ですが、まあいいんでしょう。

生地を織るのは得意でも、裁縫はそれほど得意ではないみたいですが、頑張って仕上げます。その衣装、映画館のロビーに飾ってあったのですが写真撮り忘れました。

ところが、めめたんは突然東京でデビューするということで地元を去ってしまいます。

Twitterでは「定期公演中止のお知らせ」が流れます。監督は、アイドルのMVなんかを撮ってる方だそうで、台詞なしに進行させるのがうまい。

地方アイドルが、ちょっと売れて東京に出るのはよくある話ですが、地元のファンを切り捨てるのは良くないんじゃないかなあ、と余計なことを思いました。

ちなみに、めめたんを演じたのが「錦織めぐみ」さん。きれいな衣装っぽい名前です(笑)。丸顔、ショートカット、劇中バイト中は眼鏡をかけていて、なかなかいい感じですね。

トークイベントの最後、客席からの質問で「めめたんの感情が表現されていないのはわざとですか」というのがありました。よく見てますね。確かに、めめたんは大半のシーンでニコニコしているだけ、ちょっと感情が動いても、アイドルとして職業上の表現だったりします。ここはわざとだそうです。

アイドルを扱った映画には、「世界の終わりのいずこねこ」とか「ワンダフルワールドエンド」とか、秀作もあるのですが、いずれも演者側の視点でした。「堕ちる」はファン目線ということで新しいジャンルですね。もう少し掘り下げた長編も見たいと思いました。群像劇なんかもいいんじゃないでしょうか。たとえば、めめたんが故郷を捨てたと知ったTO(トップオタ、一番熱心なファン)がどう行動するか、東京まで追っかけるのか、地元の別のアイドルに乗り換えるのかは興味あります。どちらにしても面白いと思いますし。

ネタバレ、というほどストレートには書きませんけど、以下、結末に触れます。

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2015年9月 6日 (日)

OVA「トップをねらえ」のツボ

若き日の庵野秀明監督、岡田斗司夫プロデューサで制作されたガイナックス社のオリジナルビデオアニメ(OVA)「トップをねらえ」、詳しくは検索してください(え?)。

地上OL×地下アイドルフランボワーズギーヌさんが見て

ということなので、ここでは「トップをねらえ」のツボだけ書きます。特に断りがないものは岡田斗司夫さんの著者や発言からです。断りのあるものも、岡田斗司夫さんから聞いた話です。
  • どこかで聞いたタイトルですが?
    パイロット養成の「トップガン」と、スポ根の「エースをねらえ」を合わせたタイトル(なんの取り柄もない子が抜擢されたり、コーチが病気で死ぬところは「エースをねらえ」)
  • なぜノリコがパイロットに抜擢されたのか?
    「えこひいきですね」(庵野秀明談)
  • ロボットの操縦練習がランニングや腕立て伏せって、意味があるのか?
    面白いから。でもアニメーターに「(難しいので)この絵の必然性があるのか」と問い詰められたときは答えに窮したらしい。
  • なぜ舞台が沖縄か?
    水着の女の子を自然に出せると思ったから(実際には出ていない)
  • テーマは「努力と根性」か?
    そんなことはない、「努力と根性を信じる心」がテーマ
  • カズミさんの由来は?
    (当時の)岡田斗司夫さんの奥さんの名前(特に必要ない情報です)
  • オカエリナサイが左右反転している理由
    長い年月が経って、日本語が死語になって、誰も使っていない時代だけど、世界を救った2人が帰って来たら日本語で迎えようと思ってオカエリナサイと表示した。けど、カタカナ自体が古代文字みたいなものになっているので、うっかり間違えてしまったから、

すぐ思い出せるのはこんな感じです。

オカエリナサイは本当にいい演出で「イが反対だろ」と笑って突っ込みながら、「頑張って日本語で書いてくれたんだなあ」と泣けるシーンでした。

出典: 岡田斗司夫「遺言」と、この本の元になった同名のトークイベント(ロフトプラスワン)


遺言

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2015年3月13日 (金)

追記あり「世界の終わりのいずこねこ」の続きのイベント

日本人の心は「わび・さび」から「萌え・推し」へ ~世界の終わりのいずこねこ~」の続き

世界の終わりのいずこねこ フェア」3月10日(火)~3月27日(金)

新宿bookunionでミニ展示。

  • いずこねこの衣装1点(「Re:call dress」 製作者:刀根三奈)
    「魔法の天使クリィミーマミ」の森沢優が着ているような色使い。
  • 原画3点(西島大介)
  • コミック(西島大介)
  • 写真集(飯田えりか)
  • トートバッグ
  • サウンドトラックCD

その後、映画に出てくる「ねこ缶」と「2035年のケータイ電話」が展示に追加されたようです。

会場のカワセビルは、昔ミノルタのサービスセンターがあったのですぐ分かったのですが、入口が意外に分かりにくい。diskunionの脇にひっそりとありました。

~いずこねこ衣装展~猫の嫁入り」 in 渋谷OZgallery 3月10日(火)~3月15日(日)

渋谷OZgalleryは、マンションの一室で少し分かりにくいところにありました。

「みすきまもも」さんの衣装と、「飯田えりか」さんの写真展示。この方のブログ「無頼横町」の記事「2015年3月11日 ~いずこねこ衣装展~猫の嫁入り in 渋谷OZgallery」にたくさん写真があります。

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▲衣装いろいろ

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▲目が「何処(いずこ)」

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▲映画でも使用された衣装

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▲ウエディングドレス


【追記】

新宿bookunionのミニ展示に、「2035年の携帯電話」と「ねこ缶マイルド」が追加されていました(展示のみ)。

「ねこ缶」は、木星人が人類に配給する食糧です。

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2015年3月10日 (火)

映画『ワンダフルワールドエンド』を見た

「ショートカット推進委員会」からの、飯田えりかさん(写真家)からの、「世界の終わりのいずこねこ」ということで映画も見てきました。

こちらは「日本人の心は「わび・さび」から「萌え・推し」へ ~世界の終わりのいずこねこ~」をご覧ください。もちろん「わび・さび」と並べて「萌え・推し」を書いたのは冗談です。

同じ映画館でやっていて、半券で割り引きだったのが「ワンダフルワールドエンド」。

歌手の大森靖子(おおもりせいこ)さんが関わっているということで、一緒に見ました。

こちらは、シンガーソングライターの宮崎奈穂子さんからの、イベントがあった町田デザイン専門学校からの、卒業展の「さいあくなな」さんからの推しでつながりました。

もう、めんどくさいのでいちいちリンクを張りません。

ストーリーは、読者モデルからデビューしたものの、ツイキャス視聴者最大数百人という微妙なタレント早野詩織と、詩織のファンの中学生の木下亜弓(あみちゃん)、そして詩織の彼氏の劇団員の川島浩平の3人の話。

前半、とてももどかしい展開は良かったと思うけど、ラスト15分が全くついていけませんでした。

たまたま、監督と助演男優のトークショーがあったので「物語終盤の分かりにくさは、監督としてどうよ」と尋ねたら、ベルリン映画祭でも同じことを聞かれたそうです。「そう簡単に説明できないが、主観の世界に入ってる」ということでした。

確かに、詩織とあみちゃんが走るシーンは印象的に残りました。ラストはあみちゃんが詩織を追いかけるのですが、物語中盤では詩織があみちゃんを追いかけます。どちらも「なぜそこで逃げるかな」と思いながらも、「逃げたくなるか」と納得する部分もあり、うまく対応していたと思います。

あと、とりあえず、劇団の男はくそだってことが分かりました(あくまでも役が、です)。

どうも、音楽担当の大森靖子(おおもりせいこ)さんの意向が強いみたいです(元は彼女のMVとして制作された)。ちなみに、大森靖子さんはご自身のライブシーンの他、ラスト近くの着ぐるみで出演しているそうです。赤い髪がはみ出している子です。

スチール写真が良かったのと、監督にもう少し聞きたいことがあったのでパンフレット購入。何と、スチール写真の一部は「いずこねこ」と同じ飯田えりかさんでした。

撮影会とか、ブログとか、ツイキャスとか、今どきのアイドル活動をなぞっていて、リアルでした。

撮影会では、いい感じのファンに見えていて、実は「推し」は別にいて、その子が通りがかったらすぐについて行ってしまう。ちょっときわどい番組に出たら、すぐに「脱げ」とツイキャスで言われるし。というか、実際にそういうコメントはよくあります。

撮影会の客が、バイト先の映画館で詩織が彼氏と一緒にいるのを見て驚くのも、いかにもありそうな話です。もっとも、高校生が彼氏と同棲しているのは、あまりありそうには思いませんけど。

事務所の社長は「自由だ」といいながら暗黙のうちに強制するし、思い遣っているような言葉を発しながら、次のタレントに一所懸命で、嫌な感じがとてもリアルでした(私が間接的に知る限り、事務所はもっと直接的な規制をかけるようで、「配信」を知らないというのはあり得ないと思いますが)。

でも、全体を通して、モデル出身の中途半端なアイドルと、アイドルに憧れる中学生と、くそな劇団員が、まったくくだらないことで悩むのが本当に良かったと思います(全然ほめてないようですが、ほめてます)。


▲「ワンダフルワールドエンド」予告編

ところで、この女の子2人、追いかけあったあと、そのままキスシーンに入りそうな感じだったんですが、そういう意図はあったのでしょうかね。本当の同性愛じゃなくて、ローティーンの疑似同性愛みたいな感じがしたんですが。

以下、最後までの数行はネタバレかもしれません。

 

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2014年9月23日 (火)

映画『恋する女たち』

大森一樹監督は、アイドルを撮らせたら本当にうまい。

自主制作16mm映画『暗くなるまで待てない』や、メジャーデビュー作『オレンジロード急行(エクスプレス)』も面白いし、医学部の学生たちを描いた『ヒポクラテスたち』も面白い(元キャンディーズ伊藤蘭の復帰第1作としても有名)。医学部出身の監督だけあります。『ヒポクラテスたち』はDVDを買ってしまいました。

でも、やっぱりうまいのはアイドル映画だと思います。

吉川晃司三部作

どれも良かったし、SMAPの『シュート』(1994年)も良かったと思います。

でも、一番面白かったのは、斉藤由貴の三部作

中でも面白かったのは、『恋する女たち』で、原作は少女小説家の第一人者氷室冴子。

主人公は、斉藤由貴、高井麻巳子(元おニャン子クラブ)、相楽晴子(スケバン刑事II「ビー玉のお京」)の3人。どの子もアイドル全盛期での登場です。

体育の授業中、体操服のズボンが破れた恥ずかしさに「自分のお葬式」を出してしまう高井麻巳子、尼寺へ行くといって斉藤由貴が髪を切るシーンなどが印象的ですが、私が最も好きなのはこの台詞(うろ覚えですが)。

私たちは未熟かもしれません
でも、人を愛する気持ちは誰にも負けません

高校生らしいストレートな思いが伝わってきます。

斉藤由貴の片想いの相手が若き日の柳葉敏郎で、あまり2枚目ではない感じで描かれます。そして

なぜ他の人じゃなく、彼じゃないと駄目なのだろう
(別に格好良くもないのに)

と自問します。

斉藤由貴が、ちょっと背伸びして映画「ナインハーフ」を見たら、上映館の前で柳葉敏郎に「こんな映画見るんか」とからかわれ、(隣で上映した看板を見て)「あんたこそ、いい年して『タッチ』なんか見てんじゃないわよ」と言い返すシーンは、共感とともに笑いを誘います(何しろ、劇場公開時の同時上映が『タッチ2』ですから)。

【訂正】柳葉敏郎が見ていたのは、「タッチ」ではなく、「ナイン」(原作はどちらもあだち充が原作)で、「ナインハーフ」とかけていたそうです。
台詞は「高校生にもなって『ナイン』とか『タッチ』とかマンガ見てんじゃないわよ、2分の1足りないの」でした。ナインとナインハーフなので、1/2足りない、というわけです。

とにかく台詞がいちいち素晴らしい。原作者の氷室冴子と、監督の大森一樹の組み合わせがいいのでしょう。

何よりも素晴らしいのがラストシーン。野点する3人を、カメラが引くと断崖絶壁の上にいる様子が出てきます。

高校生の女の子が持つ危うさと、がけの上にいる危うさと、そして引いたときの景色の美しさが本当にいい感じです。

そして、検索してて思い出したんですが、斉藤由貴がモデルのヌード画を前に言う台詞もいい感じです。

レーザーディスクを持ってたのですが、今再生できないので、期間限定セールを機会にDVDを買ってしまいました。


恋する女たち【期間限定プライス版】 [DVD]

『恋する女たち』は、文化庁優秀映画賞、第11 回日本アカデミー賞優秀脚本賞・優秀監督賞を受賞し、興行的にも成功したそうです。
(※ヒポクラテス、シネアスト、プロフェッサー―大森一樹の軌跡―)

斉藤由貴主演作は、このあと黒柳徹子原作の『トットチャンネル』、オリジナル脚本の『さよならの女たち』と続きます。

どれもいい作品ですが、『トットチャンネル』は原作の味が強い感じがします。植木等の快演はいいし、「日本のテレビ界を背負う」という気負いと、若さゆえの失敗がいい感じで交じり合って、いい作品になっているのですが、テレビ黎明期を描いた原作の力には及ばないようです。

『さよならの女たち』は、予告編で「原作・氷室冴子」と伝えられますが、封切られた作品には氷室冴子の名前が全くありません。

撮影中に書かれた大森一樹監督のエッセイには

  • 原作者に逃げられた、1ページもシナリオが出来ていない
  • 仕方がないので、自分で(シナリオを)書く

という泣き言が並んでいました。

当初、小樽から始まった物語が、突然神戸に移動するのも不自然です。

どうやら、北海道出身の氷室冴子の原作設定からスタートしたものの、神戸出身の大森一樹の手に負えず、土地勘のある神戸に移したのだと想像します。

作品としては決して悪くないのですが、脚本を練り上げる時間がなかったことが、全体に影響しているように思います。

「お父さんは、アイドルになる」とい突然の宣言(実は、若い頃アイドルだった)、それを受けて「お母さんは、イルカの調教師になる」という破天荒さ。そして「あなたも好きなようにしなさい」と家を追い出される理不尽さ。

どれも面白いのですが、ちょっと粗い感じがします。

ちなみに大森一樹監督は、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』も映画化しています(どちらも神戸出身ですね)。

私が見る限り、原作の雰囲気をうまく表現していました。また、原作にないエピソードとして「鼠」が、8mm映画を撮る場面も登場します。この映画が、いかにも「鼠」が撮りそうな感じで、原作以上に原作らしい感じがしました。

残念なことに、村上春樹自身はこの作品を気に入らなかったらしく、以来、『ノルウェイの森』が映画化されるまで、長編作品の映画化の許可が下りず、大森一樹監督は同業者から恨まれたそうです。

どうでもいいですが、『ノルウェイの森』のレイコさんは、最初に読んだときから桃井かおりのイメージでしたが、別の女優さんでした。

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2014年7月 6日 (日)

舞台「ひとひら」を見てきました

なんか、町宮亜子という人にそそのかされて勧められて「ひとひら」というお芝居を観て来ました(ファンなんで別にいいんですけど)。マンガが原作で、2007年にはアニメも作られたそうです。

お芝居見に行くことになった仕掛けがこれ
【告知】舞台『ひとひら』を観に行こう!町宮ツアー(^O^)/

なんか釣られている感じですが、アップルの共同創業者スティーブン・ウォズニアックはガールフレンドに頼まれて、ガールフレンドの友だちのために映画館を買ってあげたそうですから(ガールフレンドにではなくその友だちに、映画のチケットではなく映画館丸ごと)、私もまだまだです(そんなお金ももちろんありません)。

ストーリーは、青春ものの王道です。

  1. 対立する演劇部と演劇研究会
  2. 演劇部と演劇研究会の部長の確執
  3. 劣勢な演劇研究会の巻き返し
  4. エンディング

ちょっと違うのは、劣勢な演劇研究会が結局のところ負けてしまう点。でも、いいエンディングなので興味のある方はコミックをどうぞ。

本公演は7月6日(日)で終了し、アニメも7年前の作品なので、多少のネタばらしをお許しください。「ロミオ×ジュリエット」でジュリエットが死ぬとか、「宇宙戦艦ヤマト」で沖田艦長が死ぬとか、「アルプスの少女ハイジ」でクララが立つとか、そんなもんです。ミステリーは、どんなに有名でも犯人を書かないのがお約束ですが(「アクロイド殺人事件」の犯人なんて誰でも知ってますよね?)、学園ものなのでいいでしょう。

本作は、演劇部の部長「榊美麗(難しい漢字だ)」と、演劇研究会の部長である「一ノ瀬野乃」、そこに極度のあがり症である主人公の麻井麦(あさいむぎ)が絡みながら進行します。舞台は3巻までですが、コミックは7巻まで出ています(「ひとひら」シリーズ全体の主人公は麻井麦のようです)。

スポ根ものだと、当初の対立が試合や練習を通して融和するパターンがよくあります。「巨人の星」の星飛雄馬と伴宙太、「アタックNo.1」の鮎原こずえと早川みどり、「サインはV」の浅丘ユミとジュン・サンダースなど、どれも最初は反発しますが、序盤で仲良くなります(たとえが古いのはご愛敬)。

一方、榊美麗と一ノ瀬野乃は、お互いに相手のことを認め合っているのに、ちょっとした行き違いで対立を深めているところからスタートします。その理由は何かが、途中で明らかになるのはエンターテイメント作品のパターンです。いい作品は説明抜きに見せ場から始まります。

「ひとひら」が面白いのは、本心ではお互いに相手のことを思っている点です。ま、これもパターンと言えばパターンですが、それだけに演出がはまると素晴らしい作品になります。実際、とてもいい作品でした。

これが私の娘だったら「もうちょっと別の付き合い方があるだろう」と言ってやりたいところですが、きっと聞いてくれません(娘もいません)。

クライマックスは「そんなんだから友だちもできないのよ」と榊美麗に言われた一ノ瀬野乃が「友だちくらいいる、榊美麗」と発言するシーン。思い出しても泣きます。

このシーン、一ノ瀬野乃が紙に書くんですが、榊という文字はバランスがとりにくいし、美麗は画数が多い。感動シーンだけに書き間違えたら大変です。俳優さん、頑張りました。

先週見た「グレイッシュとモモ」のグレイッシュの数字に匹敵するくらいw(詳細は『「グレイッシュとモモ」を見てきた』をどうぞ)。

観劇後の飲み会で

高校生くらいだと、こういう意地の張り合いもあるかもしれないが、私くらいの年齢になるとそうも言っていられない。

意地を張っているうちに相手が死んでしまうかもしれないからだ。

そう言ったら、場が沈んでしまいました。ここは笑うところなんですが。

エンディングは、原作通り、次回作につながる形になっているので、続編を期待しています。

特に、麻井麦は極度のあがり症という設定なので、きちんと発声できているシーンが少なかったのが残念です。4巻でもあがり症は治っていないのですが、しっかりした声がもう少し多く聞けるはずです。

麻井麦役の水越朝弓さんは、いろいろなさってますね。アイドル活動もあるようです。

榊美麗と一ノ瀬野乃は3巻で卒業してしまったので、こちらの出番は続編があったとしても少ないでしょうね。残念です。

特に、一ノ瀬野乃は表情があまり変わらないという設定なので本作では物足りない感じでした。もう少しいろんな表情を見てみたい方でした。

ちなみに一ノ瀬野乃役の工藤真由さん、本業は歌手で声優さんだそうで、プリキュアにも出ていたとか。これはライブに行けってことでしょうか。

榊美麗役の葉山美侑さんは女優さんでしょうか。舞台中心みたいですね。

それと、今回の観劇ツアーの目的なのに忘れてました。町宮亜子さんと同じ事務所で、西田甲斐役の中村優希さん。今回の出演者で最年長だそうですが、15歳らしい、そして、お姉ちゃんにいじられる役が板に付いてました。

ひとつだけ気になったのが、写真家志望の遠山佳代のカメラの持ち方。一眼レフだと、ズームやピント操作のために左手を下から添える持ち方を取らざるを得ませんが、コンパクトカメラだったので左右両側を持っても不思議ではありません。でも、左手は下から支えた方が絶対安定すると思うんですが(たとえばキヤノンのWebサイトにある「カメラの持ち方、構え方」)。

演出で面白かったのがオープニング。劇中劇の台詞からスタートし(この時点では何の台詞か分からない)、舞台設定が分かるようなプロローグがあってからいったん暗転、音楽がかかります。これは映画の手法ですね。暗転したとき私の脳内にタイトルバックが出ました。

お芝居はそんなに観ていないのですが、暗転するパターンは結構珍しいんじゃないかと思います。

あと、主題歌のサビ「ひーとーひーらーのー」が頭の中でずっとリピートしてます。そこしか覚えていないので、CD買えば良かったと後悔しています。

おまけ

観劇後の飲み会で「ああいうお芝居見ると演劇したくなるよね」という話で思い出しました。

高校時代に、私が脚本と主演を担当した8mm映画のオープニングです。お芝居部分はいろんな意味で見せられません。

演劇も、学生時代、一種の地域ボランティアで小学生向けに何度かやってました。特に、最後にやった役は子供たちに結構受けていたのですが、記録に残っていません。誰かビデオにとっていたはずなんですが。

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2014年4月19日 (土)

「メアリー・ポピンズとCommon Lisp」という記事を書きました

メアリー・ポピンズとCommon Lispという記事を会社のブログに書きました。

あんまり技術的な話でもないので、こっちに書いても良かったんですが、Common Lispというプログラム言語の話なので、向こうに。

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